日刊工業新聞(不撓不屈)掲載:大和鋼機④ ~1番を目指す~

2016年8月5日

【短納期化で企業価値高める】

 気持ちいい会社
 鍛造・特殊鋼向け金属材料試験片加工を専門に手掛ける大和鋼機(東京都大田区)で働く松本大(ひろし)は2014年、父で現会長の松本治から社長就任を打診された。「自信はなかったが、迷いもなかった。遅かれ早かれ自分が社長になる。だったら今なろう」と決意した。15年4月、30歳で祖父、叔父、父に続く4代目社長に就任した。
 営業職出身の松本には守りたい思いがあった。「身だしなみ」「掃除」、そして「あいさつ」だ。「前職の営業で各社を訪問した際、もうかっている会社はきれいだった。取引してもらえるような気持ちのいい会社にしよう」と考えた。社員にはまず、この三つを徹底させた。

 ボブスレー参画
 松本は地元・大田区とのつながりも強化している。11年の入社以降、大田工業連合会の下部組織「大森工場協会YMクラブ」に所属する。父の治が「世界が狭くならないように」と勧めたのがきっかけだ。「良いものを取り入れていく感性など、先輩社長の方々は自分に足りないものをたくさん持っている。今でもよく相談に乗ってもらっている」と明かす。
 YMクラブには下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会の委員長を務める昭和製作所社長の舟久保利和も所属している。舟久保から依頼を受けた松本は、ボブスレーのソリの部品加工にも携わることになった。
 「どうやって加工すればいいんだろう」。今までやったことのない加工に戸惑った。「普段は最終的に壊れる試験片を作っている。本当に最後まで壊れないかとても不安だった」。だが、松本は困難な加工をやり遂げた。「いつもの加工とは全く違う技術だったため、本を見ながら必死に取り組んだ。新しいことに挑戦するチャンスをもらえて良かった」と顔をほころばせる。

 技術革新トライ
 大和鋼機は今後、短納期を強化し、日本で1番早く試験片加工ができる会社を目指す。「何でもいいから1番のモノをつくりたいと考えた時、当社が挑めるのはスピードだった。1番と2番とは全く価値が違う。1番でなければ意味が無い」と松本は真剣だ。
 技術革新にも取り組む。「作ったことのない種類の試験片や海外で使う違う規格の試験片など、さまざまな試験片にチャレンジしたい」と前向きだ。
 「短納期で正確な加工」を未来へつなぐ。試験片一筋の歴史は、まだ始まったばかりだ。

短納期でも精度が落ちない理由とは

弊社が、日刊工業新聞 「モノづくり支える 町工場の技」に取り上げられました。 (2015年3月31日)

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