日刊工業新聞(不撓不屈)掲載:大和鋼機② ~父と兄の潤滑剤~

2016年8月5日

【社員強調、短納期継承へ工夫】

 効率高める必要
 「ずいぶん無理を言っているな」-。1974年5月、金属材料試験片加工を専門に手がける大和鋼機(東京都大田区)に入社した現会長の松本治は、素直にそう感じた。写真が無理せず短納期を可能にするには、効率を高める必要がある。だが、具体的にどのような対策を講じるかが大きな課題だった。
 後に3代目社長に就任する治は大学卒業後、不動産会社で営業を担当していたが、創業者で父の松本福三郎が経営する大和鋼機の人手不足を見て入社を決意した。「人手不足の解消はもちろんだが、何より営業出身の父と技術者の兄(松本勝博)がやりあう様子を見て”潤滑剤”になりたいと思った」。

 営業活動を強化
 その治を待っていたのは激務だった。材料の切り出しから打刻、出荷検査、納期の管理までを全て1人で引き受けた。「好景気に沸く当時の日本は人手不足だった。人を増やしたくても適任者が見つからなかった」という。激務は88年に切り出しを担当する社員を雇うまで続いた。
 しかし、92年にバブル景気が崩壊し、仕事は激減した。会社を継続するための対策が求められた。同時に2代目の社長に就任した兄の勝博は営業活動を強化。仕事を待つのではなく、取りに行く方針を打ち出した。同年に専務に就任した治は「頻繁にお客さまを訪ねた。当社なら短納期でできるということをアピールした。不動産会社の営業時代に学んだノウハウが役立った」と振り返る。
 この営業活動が功を奏し、売り上げは徐々に回復していった。金型材料を調査・研究する部署など、これまで付き合いのなかった分野との取引も増えた。96年頃には数値制御(NC)旋盤を導入し、生産性を大幅に向上させた。

 意見交換で蓄積
 兄の勝博が60歳を迎える頃、弟の治は社長就任を打診される。準備期間は半年。会社をどういう方向にもっていきたいかを考えると就任が楽しみになった。
 03年に治が社長に就任して最初に力を入れたのは、社員とのコミュニケーションだ。週に2回は食事会を催し、社員と親交を深めた。「仕事中はとにかく時間がない。納期や技術など最低限の話はするが、仕事のやり方の話はできない。効率を高めるために、意見交換の場を設けたかった」と明かす。社員が無理をすること無く短納期を守れるノウハウを集積していった。
 治は現在、息子の松本大(ひろし)に社長の座を譲り、会長としてアドバイザー的な役割を果たしている。治の思いは息子の大へと伝わり、「短納期で正確な加工」を受け継いでいく。

短納期でも精度が落ちない理由とは

弊社が、日刊工業新聞 「モノづくり支える 町工場の技」に取り上げられました。 (2015年3月31日)

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